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電気自動車の充電設備は自宅に設置できる?設置費用の目安と注意点
電気自動車の充電設備は自宅に設置できる?設置費用の目安と注意点
目次
電気自動車の充電設備は、「普通充電器」と「急速充電器」に分けられます。一般家庭などでは普通充電器の導入が一般的ですが、屋外の充電スポットでは急速充電器も数多く提供されています。
この記事では、電気自動車の充電設備の種類や特徴を中心に、自宅への設置に必要な費用の目安や充電器の種類、導入のメリットを紹介します。電気自動車やプラグインハイブリッド車の導入とあわせて充電設備の設置も検討している方は、ぜひ参考にしてください。
電気自動車の充電設備の主な種類
EV自動車とも呼ばれる電気自動車の充電設備は、3kW〜6kW程度で充電が行える「普通充電器」と、50kW程度でスピーディに充電が行える「急速充電器」に分けられます。
それぞれの設備には規格が存在し、普通充電器は「J1772」急速充電器は「CHAdeMo(チャデモ)」と呼ばれています。
普通充電器(普通充電設備)
普通充電器は1kW〜3kW程度の出力で充電を行う設備です。屋外ではスタンドタイプの充電器が多く見られます。
自宅用の普通充電器は、壁面取り付けタイプとスタンドタイプの2種類から選ぶことができ、100Vと200Vの電圧から選べます。出力が急速充電器よりも少ない分、どのEV車でもゆっくりとしたペースで充電が進むため、少しでも効率的に充電を行いたい場合は200Vがおすすめです。
ただし、EV車の中には3kWまでしか対応していないものもあります。そうした車種は6kWの倍速充電が行えないため注意が必要です。
急速充電器(急速充電設備)
急速充電器は50kW程度の出力で充電が行える設備です。近年では100kW以上の超高速で充電が行える設備も登場しました。
一例として、新電元工業株式会社の「SDQC2F90シリーズ(90kW EV急速充電器)」は最大出力200A、総出力90kWの大出力が可能で、対応可能なEV車なら30分間で約200kmの走行距離を回復できます。
急速充電器は高圧電力が必要な設備のため、自宅用の充電設備としては不向きです。高圧契約に加え、高圧電力に対応した設備工事が必要になることから、屋外の充電スポットを中心に設置が進められています。
電気自動車の充電設備は自宅にも設置できる?
電気自動車の充電器は、安全に設備を使用するために有資格者が工事を行わなければなりません。
一般住宅などの設備のうち、600V以下で受電する設備工事については、第二種電気工事士の資格が必要となります。資格をもたない人が工事を行ってはならないと法令で定められているため、充電器の購入者自身や資格をもたない人が設備工事を行わないように注意が必要です。
設置にかかる費用の目安
電気自動車用の充電設備は、製品の購入から設置までに費用がかかります。工事業者を選び、現地調査・見積もりを経て工事の設計に入ります。
設置工事では分電盤から電線を自宅に引いて充電用コンセントを取り付けますが、充電スペースの整備や付帯設備の設置工事に費用がかかる場合もあります。資材にかかる費用や工事業者の往復の交通費(遠方から出張にきてもらう場合など)に加え、設置後の検査費も必要になります。
取り付けが簡単な面取り付けタイプで20万円前後が目安ですが、スタンドタイプはスペースの整備に費用がかかる可能性があります。配線の埋設場所が土なのかコンクリートなのかによっても費用が変わるため、事前に見積もりをとっておきましょう。
利用できる補助金はある?
2023年(令和5年)現在、国や地方自治体は充電インフラの拡大を目指して補助を行っており、お住まいの地域によっては充電設備費・工事費に関する補助が受けられます。
一例として、大阪府では「大阪府電気自動車用充電設備導入支援補助金」として、多くの府民が訪れる施設への充電設備の設置を支援しています(※)。
具体的には、大阪府内にある商業施設・公共施設・時間貸し駐車場・観光施設などにおいて、充電設備を購入して設置するもの(利用者を限定せず一般開放するもの)を対象に、国からの補助額のうち、2分の1の割合で充電設備の購入費を支援するという内容です。
2023年度の公募は5月12日から開始(11月10日必着)していますが、補助金交付予定額が予算の上限に達した時点で申請の受け付けを締め切るとしています。
自治体によって補助制度や補助金の額が異なり、交付予定額が上限に達した時点で募集を締め切られると期間内でも申請ができなくなってしまうため、募集要綱を確認のうえ、早めに申請を行ってください。
※参考元:大阪府「令和5年度 補助制度のご案内 充電インフラ拡充事業」
自宅に設置できる充電設備の種類
自宅に設置できる充電設備には、壁面取り付けタイプ・スタンドタイプ・V2H機器の3種類が挙げられます。それぞれの特徴と使い方を詳しくみていきましょう。
壁面取り付けタイプ
壁面取り付けタイプの充電設備は、コンセントを挿して充電を行うタイプです。屋外の充電スポットにある充電器のようなスタンドタイプとは異なり、コンパクトなサイズ感が特徴的です。
スタンドタイプよりも設置場所を選びにくく、取り付けも簡単なため一般家庭用の充電設備として多く普及しています。駐車場スペースが限られている集合住宅などでも採用されており、限られた空間を有効活用できる設備です。
スタンドタイプ
スタンドタイプの充電設備は、地面に立てて使用する充電器です。商業施設に設置されているスタンド充電器は高出力・大型のものが多くみられますが、一般家庭用のスタンド充電器は場所をとらないスリムタイプやコンパクトなサイズ感が特徴的です。
V2H機器
V2Hは「Vehicle in Home(車から家へ)」という意味の言葉で、設備としては「充放電器」という扱いになります。
壁面取り付けタイプ・スタンドタイプの充電器はそれぞれ家から電気を車に引く仕組みですが、V2Hを使用することで車のバッテリー内部に蓄えられた電気を非常用電源として家の中で活用できるようになります。
EV充電器のなかにはV2H充放電器と同じ機能を搭載した蓄電池内蔵型充電器も販売されています。
自宅に電気自動車の充電設備を導入するメリット
自宅に電気自動車の充電設備を設置すると、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。ここからは、効率性や順番待ちが不要といった利点についてみていきましょう。
メリット①効率的に充電できる
自宅に充電設備がなければ、自宅の近隣にある充電スタンドへ行かなければなりません。
充電スタンドが混み合っていると待ち時間が発生し、時間を効率的に充電に回せなくなってしまいます。自宅に充電設備があれば待ち時間は一切発生せず、在宅中に充電を行えるため効率的です。
一般家庭用の充電設備は高圧の急速充電器ではなく普通充電器のため、時間がかかる点がデメリットになりますが、在宅中に充電が済ませられるためまとまった時間を活用できます。
メリット②順番待ちが不要
自宅に充電設備があれば、充電待ちの列に並ぶ必要がありません。屋外の充電スポットは公共施設や商業施設を中心に増え続けていますが、地域によっては数が少なく混み合う可能性があります。
限られた充電スポットしかなければ、自分の番が回ってくるまで待ち続けなければなりません。一方、自宅にある充電設備は契約者のみの利用に限られるため、列に並ぶストレスや空きのある充電スポットを探す必要がありません。
自宅に充電設備を導入する場合の注意点
自宅に充電設備を設置する場合、3つのポイントに注意する必要があります。初期費用・満充電までの時間・設備を取り付けられない可能性のそれぞれについて詳しくみていきましょう。
初期費用がかかる
充電設備の導入には、設備の購入・設置工事・その他の諸費用がかかります。集合住宅や公共施設、商業施設ではスムーズに設備を利用できるように従量課金システムが導入されていますが、システムの導入を行う場合は諸費用として計算します。
設備が大掛かりなものになるほど初期費用がかさみますが、安いからといって利用者のニーズに合わない設備を導入しないように注意が必要です。
満充電までに時間がかかる
一般家庭や集合住宅用に導入される充電設備は、3kW〜6kWまでの普通充電器が一般的です。普通充電器の充電時間は、40kW程度のバッテリーのEV車で約16時間程度であり、外気温によってはさらに時間がかかる可能性もあります。
集合住宅で電気自動車やプラグインハイブリッド車の利用率が高い場合、満充電までに時間がかかる点を踏まえると、1台のみの設置では設備が不足するおそれがあります。
一方で、50kW以上の大出力が可能な急速充電器は数十分〜1時間程度で充電が完了しますが、初期費用と維持費のどちらも高額になる点がデメリットです。初期費用がかかりすぎることを考慮すると、利用者が限られる戸建てや集合住宅には適していない可能性があります。
取り付けられない可能性がある
機能面やデザインが気に入っても、自宅に十分なスペースがなければ設置できない場合があります。たとえば充電スタンドはカーポートや玄関付近に設置する設備ですが、該当箇所に十分な広さやゆとりがなければ駐車を邪魔してしまう可能性があります。
スタンド型よりもコンパクトなコンセント型の充電設備もありますが、こちらは壁面に取り付けるタイプです。壁から車両までの距離が離れすぎていないか、スムーズに充電ができるかを検討し、自宅に適した設備を選ぶことが大切です。
また、戸建て住宅は充電設備の取り付けが容易ですが、マンションでは他の入居者のニーズや合意がなければ設置ができません。アパートのような賃貸物件は建物の持ち主や区分所有者に決定権があり、自分の意思のみで設備を取り付けることはできません。
充電設備の設置工事業者の選び方
充電設備の設置が可能であれば、事前調査や見積もりを経て工事の段取りを整えていきます。ここからは、設備の設置工事を行う業者の選び方をみていきましょう。
第二種電気工事士の有資格者が在籍しているか
充電設備の設置には、電気工事士の資格が必要です。分電盤の交換や配線、引き込み工事といった専門的な工事は、資格を持たない人が実施することはできません。
正規に営業している工事業者でも、資格を持たないスタッフの施工は禁止されていますので、必ず有資格者が在籍し工事を実施することを確認してください。
工事業者のホームページを確認し、会社概要やその他のページで資格をもつ人が在籍している掲載されているかをチェックすることもできます。
過去の実績があるか
EV充電器を初めて設置する方は、設置件数やノウハウが豊富な業者に依頼することをおすすめします。公式のホームページやブログサイトで、過去にどれだけの実績をもっているかをチェックしてみてください。
過去の実績が掲載されていなくても、創業年数や電気工事を実施した施工事例が画像つきで掲載されていれば、一定の実績があると判断できます。掲載情報が少なく不安な場合は、いくつかの工事業者を比較しながら、件数や実績が豊富なところを選ぶと安心です。
利用者の口コミを公開しているか
「お客様の声」「施工事例」といったページで、実際に工事を行った人の事例や意見を紹介している場合があります。ブログサイトではブログページや日記のページで、1軒ずつ施工事例を紹介しながら口コミが取り上げられていることもあります。
利用者の口コミを取り上げている業者ほど、利用者の反応を考慮し現場でのコミュニケーションも大切にしている可能性があります。料金やサービス内容が確認できることも重要ですが、正確性の高い口コミを公開している業者かどうかもチェックしてみてください。
EV充電器の設置は信頼のできる会社に相談
今回は、電気自動車の充電設備について詳しく紹介しました。家庭用の充電設備は設置場所や製品の価格を比較し、自宅の環境や車に適したものを選ぶことが大切です。
充電設備の導入は、初期費用を含めたコスト面を事前によく比較しておきましょう。信頼のできる工事業者や設置サービスを提供している会社に早い段階で相談し、現地調査や打ち合わせで設置を検討しましょう。
EV充電器に関する不明点も打ち合わせの際に解消し、費用だけではなく機能面でもしっかりと比較を行ってください。
EVライフでは、EVスタンドやEV充電器の設置に関わるサポートを行っています。
これから導入をお考えの方は、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
宮尾 魁
第1種電気工事士
宮尾 魁
第1種電気工事士
<保有資格>
第1種電気工事士、2級電気工事施工管理技士
<略歴>
電気工事会社で工事業務を担当し数々の大規模プロジェクトに携わり、高い技術と専門知識を習得。組織内の工事プロジェクトの指揮を執る。革新的な技術や効率的なプロジェクト管理を取り入れる手法は業界内での評価も高い。