EV充電の基礎知識
EV CHARGING
共同住宅やビル、商業施設にEV充電器を設置するときのポイント
共同住宅やビル、商業施設にEV充電器を設置するときのポイント
今後、電気自動車(EV車)が普及されていくなかで、マンションやアパートなどの共同住宅や企業が入るビル、駐車場を備えた商業施設では、EV充電環境のインフラ整備が不可欠になります。複数の人が利用する場合の設置方法や目的に合わせた充電器の選び方についてご紹介します。
集合住宅・商業施設設置のポイント
共同住宅では利便性や駐車場環境に合わせる
共同住宅であるマンションやアパートに充電器を設置する場合、入居者の自動車の利用頻度や駐車場の数、立体駐車場・機械式駐車場など環境や状況により必要なことが変わってきます。
既存のエンジン車は、ガソリンスタンドに行き、長くても十数分で給油が完了しますが、電気自動車の充電は200Vの普通充電器(※1)を利用した場合、1時間で約20km走行分となり、もし満タン補給するならそれなりの時間を要することがわかります。
充電待ちや電気容量不足などによるトラブル回避のためにも、駐車場の電源設備の環境や入居者の要望などを十分に確認し、利便性に配慮して設置するようにしましょう。
※1 電気自動車の充電器には、普通充電器と急速充電器があります。
詳しくは【2つの充電方法「普通充電」と「急速充電」の違いについて】でご確認ください。
設置方法はいろいろ。一例を紹介
個別設置型
個人利用で、駐車スペースごとに一基の充電器を設置する方法。通勤で使用するなど日常的に自動車を利用する人に向いています。電気使用量は、個別のメーターで測定・決済します。
共有設置型
来客用駐車場や洗浄スペースなど、共用スペースに充電器を設置する方法。複数の人で利用するので、予約システムがあると便利です。電気使用量は、管理組合や管理会社、オーナーなどが一括で管理し、利用時ごとに決済します。
ビルや商業施設では利用シーンに合わせる
多くの企業が入るビルの駐車場利用は、通勤、営業で使う社用車や来客用がメインになりますが、それぞれ用途により駐車場での滞在時間が異なります。例えば通勤利用の場合、出勤から退勤までの間に一度も自動車を利用しなければ、7〜8時間は駐車場に停まっていることになります。営業車などの場合は、帰社したタイミングで少しでも充電ができると便利です。
商業施設も同じように短時間の買い物で済むスーパーなのか、ショッピングモールなどの大型複合施設なのかにより、お客さまの滞在時間に大きな差があります。さらに商業施設の場合は、市街地にあるのか、市街から離れた郊外タイプなのかでも必要なエネルギー補給、すなわち充電時間が変わります。
このように、さまざまな利用シーンに合わせた充電器選びが設置するときのポイントになります。
ニーズに合った充電器とは?
全国都市交通特性調査「個人属性別・目的別・代表交通手段別平均所要時間」(平成27年実施)によると、自動車の稼働時間は約30分、ほとんどの自動車が長時間駐車場に滞在していることがわかります。そのため、共同住宅の駐車場に設置する充電器のメインは、普通充電器になります。
例えば、6kW/単相200Vの高出力タイプの普通充電器を利用すると、40kWh(kWh=バッテリー容量)の電気自動車をフル充電するには約8時間必要です。しかし、1日のほとんどが駐車場に滞在しているのであれば複数人での利用が可能になります。
ビルや商業施設では、電気自動車1台につき充電器の利用がどの程度になるか、30分〜1時間など、利用時間を想定して普通充電器と急速充電器の併設も検討すると良いでしょう。また、急速充電器には充電ケーブルが1口タイプと複数口タイプがありますので、設置基数やスペースに合わせて選ぶことができます。
50kW/三相200Vの急速充電器を利用した場合、40kWhの電気自動車をフル充電するには約1時間になります。
充電器の種類別フル充電時間の目安
充電器の種類 | 電力出力/充電時間 | 電力出力/充電時間 | |||
---|---|---|---|---|---|
バッテリー容量40kWh | 普通充電(単相200V) | 3kW | 約16時間 | 6kW | 約8時間 |
急速充電(三相200V) | 25kW | 約1時間45分 | 50kW | 約1時間 |
※充電を始める電池残量により充電時間は前後します。
急速充電器の方が利便性は高いですが、その分、設置するための導入費用は普通充電器と比べると種類により約10倍以上の差が出ることがあります。ただ、令和4年現在は国からの補助金があるので、うまく活用することが大切です。
補助金を活用しましょう
令和4年度に活用できる充電インフラ補助予算が、令和3年度の補助実績の6倍以上となる約65億円が盛り込まれることになりました。個人宅以外、原則すべてのエリアの補助が対象で、マンションや商業施設、事業所の駐車場も対象になっています。補助率は充電設備費の50%+工事費の100%で、補助金は“なくなり次第受付終了”と、ある意味早いもの勝ち。
現在、日本国内の充電インフラは発展途上といえますが、国からの補助金制度を活用した設置が増えてきています。
補助金制度に関する詳細は【補助対象となるEV車と充電設備】で紹介していますので、参考にしてみてください。
※写真はすべてイメージです。
この記事の監修者
宮尾 魁
第1種電気工事士
宮尾 魁
第1種電気工事士
<保有資格>
第1種電気工事士、2級電気工事施工管理技士
<略歴>
電気工事会社で工事業務を担当し数々の大規模プロジェクトに携わり、高い技術と専門知識を習得。組織内の工事プロジェクトの指揮を執る。革新的な技術や効率的なプロジェクト管理を取り入れる手法は業界内での評価も高い。